【研究発表会】 私たちの望む未来のまちをかたる(報告)

埼玉政経セミナー主催『研究発表会』 

埼玉政経セミナー会員による研究発表会が3月14日午後2時より、春日部市市民活動センターにて開催されました。当日は会場にはスタッフ、コメンテーターを含めて9名、他は各自オンラインをとおしての市民が参加しました。セミナーがめざす「自立した協働のまちづくり」に向けて、会員3名がそれぞれの問題意識に基づいて「公共(協働)交通をつくるには」「人口現状はマイナスなのか」「生活保護と貧困」について、学んできたことと意見を発表しました。

今回は会場にカメラを設置し、オンライン参加の方は、それぞれの場所からZOOMで参加して、1つの画面を見るという形での開催に挑戦しました。感染の状況から先が見えないなか、このような形での市民の勉強会を重ねていくために、セミナーにとっても、有効な経験となりました。参加者を募るために、それぞれがネットやチラシを使った発信をし、オンラインでの参加経験がなかった友人や知り合いにzoomを紹介して参加をよびかけるという、今までになかった広がりができました。

「公共(協働)交通をつくるには」
白岡市の公共交通の現状をまわりの市町村と比較し、その脆弱さを明らかにしました。現在の行政がおこなっている公共交通の不十分さを克服するために、協議会メンバーの入れ替えと透明性の強化、近隣行政との連携による乗り入れ的に交通をつなぐ提案、そして、国土交通省が近年すすめている自家用有償運送を各地域で市民と行政がおこなっていることへの課題を示しました。

「人口減少はマイナスか」
ここでは春日部市の歴史から、各地域の成り立ちによって人々の考えに特徴があること、またその特徴が現在も「空気」として残っている場合が多いこと、統計データからは子育て世代や労働世代の減少が大きいことが明らかになりました。市の人口が減少することによって生じる問題点は、たしかに多々あります。そのデメリットについてどうしても注目が集まり、「人口さえ増えれば」経済成長が見込まれ、豊かな市民生活を営むことができると強調されがちですが、それは目先の課題解決にしかならなりません。持続可能な社会をつくるためには、長期的、環境的、文化的にとらえるという人口減少のメリットに視点を変え、人権、つまり人が生きていくうえで「豊かな生活」とはどういうことかを基盤としたまちづくりをまずは自分自身が考えること、またその考えを地域や行政の人たちと話し合う空間を無数に作ることであると提案されました。
「生活保護と貧困」
感染症の広がりにより、より一層、社会が痛んでいるなか、生活保護率に注目しました。埼玉県では生活保護の保護率が増加傾向で、市単位で傾向を探ると人口規模や市民所得によって相関性が見受けられました。特に市の平均年収の減収と保護膣の悪化は謙虚で、負のスパイラルが進んでいます。生活保護制度は、資産があると受給できないという事はなく、親族紹介も状況に応じて柔軟に対応していました。しかし、社会保障制度として鑑みると、受給や精神的ハードルが高く、「最後のとりで」に行くつく前の貧困対策や最初の砦としてベーシックインカムやベーシックサービスの必要性に言及しています。とくに、このコロナ過では圧倒的な不平等が生まれ、これから社会で働いていく若者世代には、今後の社会保障が追いついていないことへの不安が増しています。
また、自助・共助・公助の順位では自分を守るために非常時に貯蓄を増やし、経済を縮小させてしまいがちで、社会保障を自助から行うのではなく、まず公助から担っていくことの可能性を探るべきではないでしょうか。

以上の発表を受けて、白岡市議会の石原議員は、買い物難民、高齢者のひきこもりが懸念されるなか、議会を通じて公共交通の改善を求めてきている経緯を話しました。消防や図書館などは、すでに広域利用が相互におこなわれる時代であり、公共交通も、行政単位ではなく、自治体を超えて乗り入れしあうこと、そのために主権者の発信が大事であることを痛感しているとのコメントがありました。会場となった春日部市市民活動センターの遠藤健氏は、3つの発表すべてにおいて、まず公助があり、そのさきに共助、自助があると考えるとの意見をいただきました。社会に迷惑をかけたくないと思う人々の気持ちを「人々が安定を求めることは社会として当たり前のこと」にするには、安定と生産性は相反しないことを、社会が学んでいくことが求められていることと発言されました。
また、主権者である市民たちが、その主権を生かしていくために当事者意識をどう作っていくのかもふくめて、意見交換がおこなわれました。「参加する人は義務と権利の両方を理解して使っていく」「若い人たちの意見がとおらない」「政治を変えていくための住民投票などの制度を使っていく力をつける」「結論を求めずに、対話を深めていく」「現代人は忙しすぎて議論をすることもできない」「共通の話題を深めていくコモンズを作ろう」「友人をこの勉強会に誘ってみた」「生徒に考えさせずに、最初から結論が決まっている教育の問題」「不満をもつだけでなく、自分たちが行動することの必要性を訴えること」等の意見がでました。また、オンライン参加の方たちからは、このような形で開催することへの賛同をいただきつつ、オンライン開催のときの工夫(マイクや画面共有など)についても、指摘をいただきました。

市民による学びの発表という形に、多くの市民の参加があり、そこから次に発展する道筋を考えさせる会となったことを報告いたします。

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