令和5年度連続講座第1回 「あなたの隣の外国人」開催報告

セミナー講演録

さいたま政経セミナー R5年度連続講座「あなたの隣の社会課題」

第1回テーマ「あなたの隣の外国人」 開催報告

去る8月24日、春日部市市民活動センター会議室にて、埼玉政経セミナーの連続講座「あなたの隣の社会課題」の第1回目「あなたの隣の外国人」を開催いたしました。昨年度は今年4月の統一地方選挙に焦点を絞った「政治家を養成する」講座でしたが、選挙が終わった今年度は、選挙だけが政治ではない、という想いから、私達の日常生活の中にある社会課題を、どう「自分事」にしていけるかということ、またよく候補者たちが使う「弱い立場の人たちに寄り添う」という言葉は、本当はどういった意味を持つのか、また寄り添うために私たちは弱い立場と呼ばれる人々についてよく知らないのではないかという問題意識から、「あなたの隣の社会問題」という大きなテーマで、世間的にマイノリティであるといわれる人々の日常を赤裸々に語ってもらい、対話をする講座を企画しました。これは、マイノリティの方たちが課題と感じることは、自分の持つ課題と必ず共通するところがある。だからよく知り合うことで自分も当事者と感じることができるのではないかということを仮定しました。

鳥居牧子氏(行政書士)

まず越谷市で行政書士をされている鳥居牧子氏から、外国人が日本に入国する仕組み、例えば在留資格とVISAの違いや在留資格の種類、手続きの流れなど基本的な情報の生理と、在留資格には29種類もあり、細かく制約が設定されていることや、在留カードの常時携帯ルールについて伺いました。

錦光山雅子氏(元朝日新聞記者 フリーライター)

1人目はフランス人を夫に持ち、小学生の男の子の母親である錦光山雅子氏の報告。朝日新聞やハフポスト日本版で20年ほど記者をやった後、AIベンチャーの広報を経て、フリーランスで活動中の方です。彼女は、結婚後夫婦二人でアメリカに留学するなど、自分自身も「外国人」として日本以外の生活を行っていたり、お子さんは複数の国籍を持っていたりと(日本、フランス、アメリカ)、私達が想像するような「日常生活」を送っていないのですが、自分が常識と思っていること(炊飯器の使い方など)が全く通用しないこと、言葉を知らないだけで沢山の情報を見逃していることなど、夫婦間のコミュニケーションについて話されました。今一番の関心事はお子さんの「母語」をどうするかということで、自分は日本にいて日本語(母語)を話し、生活しているが、夫はフランスに戻ると生き生きとフランス語を使い、話す。夫も自分の母語で子どもと思い切り話をしたいのではないかという、意思疎通、コミュニケーションの重要性についての問題提起でした。

利柳下亜矢子氏(購読会員)

2人目は夫がスリランカ人の利柳下亜矢子氏。彼女も20代の娘がいますが、彼女の場合は夫が日本に帰化しており、日本語も堪能です。入管の手続きの際に感じた「日本人の外国人への扱い」の酷さや理不尽さについて疑問を呈しました。日本語が分からない女性が入管時に証紙を購入し忘れて並んでおり、長い時間かけて自分の順番になって証紙が無いことを指摘されたとき、並んでいた他の外国人は、証紙を買ってそのまま手続きを続けることに誰も文句を言わないのに、職員だけが日本語が分からないことは自己責任であるといわんばかりに証紙を買いなおして再度並びなおせと指示を出した話や、鳥居氏が話された在留カードについても、既に帰化していて持つ必要がないという説明がなかなか通じないことなどを話されました。

アタバ結実氏

3人目は夫がカメルーン人のアタバ結実氏。彼女は中学生を筆頭に昨年末に生まれた第4子までの4人のお子さんをもつ子育て世代です。結婚直後は夫が「仮放免」の状態であったことから、仮放免者の扱いと、VISAを持っている人の扱いのあからさまな違いや、抜き打ちの家庭訪問などの「仕打ち」といわれるような扱いに愕然とします。驚くべきは夫婦で言葉がほぼ通じないという状態で暮らし始めたということですが、その中でコミュニケーションが取れないことへのいら立ちや不安ではなく、「働いてはいけない」中で生活費を創り出す実行力と価値観の違いや、理想から始めるからマイナス面が目立つのであってゼロから始めるのだから間違って当然という考え方を尊敬するようになったという話から、純粋な人間同士のコミュニケーションとは何か、ということを考えさせられました。

報告を受けてのディスカッション

後半は3人が共通して話題に挙げていた「言葉」・「コミュニケーション」について全体で会場やネットの参加者を交えながらディスカッションを行いました。まず最初に考えたのが「母語」の問題です。「母語」とは、その人が子供のころから使っていて、もっともスムーズに感情を表現することのできる言語のことです。似たような言葉に「母国語」がありますが、母国語という言葉は、母国の公用語という意味ですので、母国語=母語という関係が成り立つのは、日本のように国民のほとんどが同じ言語を話すという国のみです。世界視点で見ると母語=母国語の日本はマイノリティと言えます。ですが、普段日本で日本人として生活していると気にならないので、この母語について参加者の中に難しいという意見が上がっていました。錦光山氏は夫が自分の母語で子どもとコミュニケーションをとれていないことについての悩みを話しました。日本語を母語とすると夫が生き生きと話せない。逆にフランス語を母語としてしまったら、日本語で自分(母親)と思い切り話すことはできるのだろうかという彼女の悩みは、母語が、自己のアイデンティティに大きく影響するということにつながります。そして、アタバ氏の夫の「同じ言葉を話す人は家族、それ以外は友達」「同じ言葉を話す人ならば必ず助ける」という発言は母語による民族アイデンティティの強さを伺わせます。日本人にこの強さは果たしてあるのかと感じました。今後少子化がどんどん進んで日本語を話す日本人がマイノリティになるかもしれない。戦争で日本という国がなくなったり、日本語を制限されたりするかもしれない。このような極限時に慌てるのではなく、日本人とは?ということは今から突き詰めて考えるべき事項であることが見えてきました。

利柳下氏の「伝えようとする意志があれば、多少間違った言葉でも必ず伝えられる」という視点はコミュニケーションの基本を明確に突いた発言でした。日本人は日本語が通じない外国人に及び腰になりがちです。1番大事なのは伝えたいという気持ち。アタバ氏もご自身の経験から「自分を知ってほしい、そう思うならば、意思をもって伝える最大限の努力をするべきだと、その時完璧である必要はないのだ」と発言されました。人間同士のコミュニケーションとは何なのか。そして言葉だけに頼らない人間同士のコミュニケーションを通じて、無意識に巣くっている偏見や差別を少しずつ取り払っていくことが、相手も自分も幸せになるのだと気付きを得られました。

次回、2回目の講座は10月28日(土)に開催いたします。次回のお隣さんは、「LGBTQ」の人たちです。彼らと共に、自分の持つ課題との共通性を見つけていきたいと思います。

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